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ゲニカントゥス飼育法

2006年04月20日 14:38

今回から始まる「海水魚飼育法」。
ケントロなどのメジャー種は色々な人が書いているので、いまさらあえて書く必要もないと思う。なので当面、ここでは余り日の当たらないマイナー魚種を取り上げていきたい。

第一弾はヤッコのマイナー種・ゲニカントゥスについて。
■必要水槽サイズ・及び濾過など
ゲニカントゥス属のヤッコは、ショップでよくみられるサイズで10~15センチほどと、流通サイズでは中型ヤッコに区分けできる。しかしながら遊泳性ということもあり、サイズの割に広い水槽が必要なヤッコたちだ。そのため、最低水槽サイズは90センチ水槽としておきたい。できることなら、120~150センチクラスの水槽を用意するのが理想的。ゲニカントゥスの中でも小型のベルス、ヒレナガであれば、90センチ水槽でも飼育が可能だ。が、基本は120センチ以上である。レイアウトは比較的シンプルにし、なるべく遊泳スペースを確保してやりたい。飾りサンゴ主体の混泳水槽スタイルもいいが、体色の維持などを考えてみると、ある程度サンゴを配置したリーフタンクでの飼育がベストだろう。サンゴは強光の必要なミドリイシ類ではなく、蛍光灯でも大丈夫なLPSやソフトを主体にすべきだ。これはゲニカントゥスの、自然界での生息水深を考えれば適当な選択であろう。つまり、メタハラはゲニカントゥスたちの照明としては強過ぎるのだ。

フィルターは、水槽サイズが大型ということもあり、オーバーフロー濾過がスタンダードである。底面式、分割式のどちらでも良いが、なるべく濾過容量は大きく取りたい。周辺機器では、殺菌灯やプロテインスキマーの設置も有効。重要なのは、濾過の効いた清浄な海水を提供することである。システムの充実と併せて定期的な換水を行い、常に海水成分をリフレッシュさせるのも、上手に飼育するポイントだ。水温は23~24℃がベストな水温帯。上がっても26℃以上にはしない方がよい。ゲニカントゥスは遊泳性だけに、水流も大切な要素である。複数のパワーヘッドとコントローラーを用いて、ランダムな水流を起こしてやる。これは一緒に飼育するサンゴにとっても有効となる。

■他魚との混泳について
基本的に、ゲニカントゥスを主役にすべきである。できるだけ、他の中・大型ヤッコとの組み合わせは避けたいところ。他のヤッコとの混泳だと追われていなくても、ストレスから徐々に弱ってきてしまうことがあるからだ。オスの体色を維持するという点でも、ゲニカントゥスを一番にしておく必要がある。また、ハナダイやイトヒキベラなどとの混泳も避けた方がよい。こちらは逆に、ゲニカントゥスにプレッシャーを受けてしまい、ハナダイやベラは飛び出してしまうことが多い。生活圏が重なるため、狭い水槽ではハナダイやイトヒキベラは、ゲニカントゥスのテリトリー争いに巻き込まれやすいからである。ただ水槽がかなり広ければ、ハナダイなどとの組み合わせは可能になるだろう(それでもベントラなどの小型種は避けた方が無難)。
ネズッポや底性ハゼ類、カエルウオ、バスレット類などはゲニカントゥスと互いに干渉せず、最も安全性の高いタンクメイトである。またスカンクシュリンプやホワイトソックスも、良い混泳相手になる。

■ゲニカントゥス属の種別難易度
(入手可能な種類のみ挙げてある)
・比較的容易
ベルス、ゼブラエンゼル、ヤイトヤッコ、タテジマヤッコ
これらの種は、入荷状態もそこそこマトモ(ゲニカントゥスにしては、ということだが)であり、人工餌に餌付かせることも難しくない。減圧症にさえ注意すれば、長期飼育も目指せる。とはいえ、長期飼育難易度は他のヤッコに比べれば高い。

・難しい
トサヤッコ、ヒレナガヤッコ
共に初期の餌付けに手こずる種。特にトサヤッコのオス個体、ヒレナガの大きめ個体は難しい。減圧症が出ている個体も多く、ベテランにとっても、この2種をきちんと餌付かせること、また長期飼育することは相当に難しい。ましてや、ビギナーが手を出していい種類ではない。

■餌
プランクトン食性ということもあり、初期の餌付けには冷凍のコペポーダやブラインシュリンプを用いることが多い。しかし幼魚個体ならば有効かもしれないが、ある程度のサイズの個体には、腹の足しにもならないので、あまり用いるべきではない。最初からフレークや顆粒状の餌に馴れさせてしまうのが面倒がなくていい。人工餌の食いが悪い場合は、アサリやアマエビの汁を、粒餌に染み込ませて与えると効果がある。人工餌に馴れにくいトサヤッコやヒレナガには、アサリやアマエビのみじん切りを与えると、興味を示して食べてくれることが多い。ただし生餌は著しく水を汚すので、水質の悪化には十分な注意が必要になる。

餌の与え方は、最初はこまめに与えるのが望ましい。特に幼魚期は痩せやすいので、十分に注意したい。10センチぐらいの個体は、太ってきたら、1日1~2回の普通の給餌でもいいだろう。メニューは粒または顆粒状人工餌をメインに、フレークとクリルを与えて変化をつける。

餌に関連することで、おかしな行動がみられる。水面に浮いた餌と一緒に、空気を食べてしまう個体がいる。水槽ならではの変わった行動である。空気を食べてしまうと減圧症のような泳ぎ方になるが、時間が経つと排泄され、普通の泳ぎに戻る。この行動は今のところ、ベルスとゼブラエンゼルで確認している。こんな行動を見せる個体でも年単位での飼育ができたので、健康上の支障はないようだ。キーパーにとっては、あまり気持ちのいい行動ではないが。

■性転換について
ゲニカントゥスは、メスからオスへ。またオスからメスへも性転換する。体長10センチ程度の個体は変化が激しく、オス個体でも少々プレッシャーを受けると容易にメスの体色へと変化してしまう。しかし15センチ以上の大型のオスになると、ちょっとやそっとのことではメスへ変化することはなくなる。また種類によっても変化しやすさに程度があるように思える。オスの体色を維持するには、強い他魚を入れないことと、メスを3~4匹程度入れてやると良い。ただメス同士でも順位争いが起きるので、ひどいケンカになるようなら、別水槽に避難させるなどの処置は必要になる。

■購入時の注意点
ベルス、ヤイト、タテジマなどでは、比較的まともな個体を見る機会が多いが、トサヤッコ、ヒレナガでは長期飼育に耐えうるだけの良個体が少ない。また入荷数の少なさが、良い個体の入手難に拍車をかけている。まず注意すべきは減圧症の有無。減圧症になっている個体は、正常な個体に比べると、体力の消耗がかなり激しい。また膨らんだウキブクロに内蔵が圧迫され、ダメージを受けている可能性もある。このような個体を選んではいけない。痩せている個体も避けること。それがたとえ餌を食べていたとしても、である。餌を食べていても痩せてきている場合は、内蔵に致命的なダメージを受けている可能性が高い。これも選んではいけない。フラフラと泳いだり、ボーッと泳いでいるようなものも駄目だ。他に目に濁りがある、口が充血している、呼吸が早いなどもあるが、これらは魚選びの基本中の基本である。

良い個体と思えるものを見つけたら、ショップにできるだけ取り置きせず、すぐに持って帰るようにする。ショップの水槽というのは、どんな良いショップであっても、アクアリストがきちんと管理する水槽よりも劣る。よくないショップになると、一日長く置いただけで致命傷になることもある。なので、なるべく自分の水槽に速やかに導入するべきなのだ。特に水質に敏感なゲニカントゥスでは重要なことである。

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