
マーシャル産(photo/J.E.Randall)
エラブタのフチが黒く、胸ビレの付け根に黒点がある。

フレンチ・ポリネシア産(photo/J.E.Randall)
こちらもエラブタのフチが黒く、胸ビレの付け根に黒点。

ハワイ産(photo/J.E.Randall)
エラブタのフチが黒くなく、胸ビレの黒点も無い。

マルケサス産(photo/J.E.Randall)
胸ビレの付け根に黒点は無いが、エラブタのフチは黒い。

ポッターズ・ピグミーエンゼルフィッシュとの交雑種(photo/J.E.Randall)
この他、アカハラヤッコやルリヤッコ、ダイダイヤッコとの交雑個体も知られている。
学名:Centropyge loricula (Günther, 1874)
和名:なし
英名:フレーム・エンゼル Flame angel
全長:10cm
太平洋熱帯域に広く分布
赤い体色が目を引く、美しい小型ヤッコ。赤い体色は個体差があり、オレンジがかったものから、深紅の個体までさまざま。体側の黒いバンドの入り方にも個体差・地域差があり、太いバンドのもの、細いもの、まばらに入るもの、ほとんどバンドが無いものなどがいる。十分に成長してオスになった個体は、背ビレと尻ビレの後端が尖り、そこに入る青い模様がメスよりも多い。画像のマーシャル産のものと、フレンチ・ポリネシア産のものはオス個体だと思われる。水深4~60mの幅広い水深帯でみられる。10~20mの水深帯に最も多い。付着生物や藻類を食べる。
J.E.Randall氏は、ハワイ産とその他産地の差について、エラブタのフチと胸ビレの付け根が黒いか、そうでないかが区別点だとしている。ハワイ産のものには黒い部分が無いか、ごく薄いとされる。しかし数々の海中写真や、アクアリウムショップに入荷する個体をみてみると、他産地の中にも、エラブタや胸ビレの付け根に黒い部分を持たない個体がいる。そのような状況から、この判別法は、決定打に欠けると言わざるを得ないのではないだろうか。また体の赤さについては J.P.Hoover氏が、ハワイでは赤みの強い個体は稀であると述べている。赤の強いものがハワイ産であるという「アクアリウム界の常識」とは反対のもので興味深い。アクアリウムショップに入荷する「ハワイアン・ウルトラフレーム」を見てみると、黒いバンドが少ない、あるいは小さく、赤みの強い個体が多い。たまにしか入荷しないところをみると、個体数が少ないところで、さらに赤みの強い個体を選んで採集しているからかもしれない。
余談だが、ハワイのオアフ島カネオヘ湾には大きなシッパーがあり、そこではさまざまな産地の魚が集められている。そこのシッパーでは、何と売れ残ったりした余剰魚を、ハワイの海に放流してしまっている。フレーム・エンゼルも例外ではなく、他産地のものが放流されている。そういった、元は他産地のフレーム・エンゼルが再度採集され、今度はハワイ産として流通している可能性も十分に考えられる。もはや「ハワイアン・ウルトラフレーム」という「ブランド」は、かなり怪しくなっていると言えるだろう。フレーム・エンゼルを選ぶなら産地に惑わされず、気に入った色・模様のものを入手するのが賢明だ。
飼育に関しては、そう難しいものではない。しかし、水槽状態が落ち着いていなかったりすると、白点病にかかりやすい面がある。またメタルハライドランプを多灯したような明るい水槽では、背中が黒ずみやすく、汚らしい感じになってしまうことが多い。綺麗な体色を維持するなら、蛍光灯だけの水槽で飼育したほうが良いだろう。また、魚病薬を頻繁に使用したり、水質があまりよくないと、赤い体色はどんどん褪せていってしまうので注意。入荷状態は比較的良い場合が多いが、便によってはよくないことがある。入手の際には十分に状態を見極めてからにしたい。あまりサンゴを突かないタイプの小型ヤッコだが、個体によっては猛烈に突くものが稀にみられる。人工餌はだいたい何でも食べるが、植物質のものを中心に与えた方が状態良く飼育できる。
種小名は「小胸壁」という意味。おそらく、その部分に特徴が有るということなのだろう。英名は赤い体色から。
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