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ピクチャースク・ドラゴネット

2010年12月20日 15:39

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オス個体。(photo/J.E.Randall)


学名:Synchiropus picturatus (Peters, 1877)
和名:なし
英名:ピクチャースク・ドラゴネット Picturesque dragonet
全長7cm
フィリピン~北西オーストラリアに分布

サイケデリックなスポット模様が特徴の小型種。マンダリンフィッシュの模様違いといった種である。オス・メスはやはり第一背ビレで見分けるが、本種は背ビレの伸長がマンダリンフィッシュよりも短く、小型個体では見分けが難しい。生息域は狭く、フィリピン、インドネシアが分布の中心。行動その他はマンダリンフィッシュに準じる。

観賞魚としてポピュラーな種で、日本のアクアリウムではその模様から、スポッテッドマンダリンフィッシュの名で親しまれている。分布は狭いが、幸いにもフィリピン、インドネシアのため、安価で入荷するのがありがたい。これが東アフリカ限定などという種であれば、10倍の価格であってもおかしくない。そう考えれば、安価であることのありがたさが分かるというものだ。飼育はミヤケテグリ、マンダリンフィッシュの記事を参照。

種小名は『描かれた、刺繍された、縁取られた』などという意味。特徴的な模様に由来。英名の picturesque は『美しい、絵のような』といった意味。やはり体色、模様に由来したものである。
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ニシキテグリ

2010年12月19日 00:47

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(photo/J.E.Randall)

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オス個体。(photo/J.E.Randall)

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メス個体。(photo/J.E.Randall)


学名:Pterosynchiropus splendidus (Herre, 1927)
和名:ニシキテグリ
英名:マンダリンフィッシュ Mandarinfish
全長7cm
西部太平洋に分布

非常に派手な色彩をした小型種。多くのネズッポ類は、砂泥地や砂礫底を主な生活圏としているため、体型は上から押しつぶしたような扁平な体型をしている。しかし本種とスポッテッドマンダリンフィッシュ Pterosynchiropus picturatus の2種は、どちらかというと普通の魚の体型に近い。これは熱帯域で、ミドリイシなどのサンゴの隙間に入り込んだりするために都合のよい体型である。他のネズッポのように扁平な体型では、そのような場所に入り込めない。生息場所に適応した体型変化といえるだろう。本種は他の小型ネズッポ類と同様、ヒレの形状でオス・メスが判別できる。オスは第一背ビレが伸長するのに対し、メスでは全く伸長せず、小さい。またオスは第一背ビレだけでなく、各ヒレもメスより大きくなり、体型も大きい。メスはオスより小さく、体型がふっくらとする。日没時にペアが寄り添って海面方向に上昇し、産卵することが知られている。食性はゴカイや小型甲殻類などの底性小動物。

観賞魚としては非常にポピュラーで、ほとんどどこでも見られると言っていいほど。価格も安価で入手しやすい。しかし飼いやすいかというと、そうでもない魚である。基本的な飼育はミヤケテグリの記事を参照のこと。どのネズッポでも問題となるのが初期の餌付け。入荷して間もない、まだ痩せていない個体を入手して、素早く餌付けてしまいたい。まずは冷凍餌あたりから始めてみるのがよい。餌付いたら人工餌を混ぜていく。人工餌に完全に慣れてしまえば、あとは心配いらない。餌付き後は混泳魚に注意すれば、長期飼育は比較的たやすいはずである。
※本種はストレスを受けると、有毒な粘液を分泌することがある。おそらく同居魚にしょっちゅう突かれたり、体調が悪く死にそうな場合などだと思われる。事例としては少ないが、このようなこともあるので注意しておいた方がいいだろう。(情報提供:delphinus氏)
この事例に関する参考文献
Debelius, Helmut, & Baensch, Hans A., Marine Atlas, 1994, Tetra Press.
Dakin, Nick, The Marine Aquarium Problem Solver, 1996, Tetra Press.
Cy, Dr. Barb & Todley, Green Mandarin (Synchiropus splendidus), 2005

種小名は『光彩のある。華麗な』といった意味。美しい体色に由来したものである。英名は本種のオレンジ色が、おそらくマンダリンというミカンの一種の果実の色を、連想させるところから付いたのではないかと思われる。和名はその派手な体色に由来。

※英名について。
この種のエキゾチックな体色を、科挙で登用された官僚(科挙官僚=Mandarin)が着る服に見立てた物(情報提供:delphinus氏)。こちらの方が正しい由来とされる。

ヤマドリ

2010年09月01日 17:52

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(photo/J.E.Randall)
成熟したオス成魚。

学名:Neosynchiropus(Synchiropus) ijimae Jordan & Thompson, 1914
和名:ヤマドリ
英名:ジャパニーズ・ドラゴネット Japanese dragonet
全長:9cm
日本沿岸に分布

北海道から九州までの沿岸浅海域に生息する温帯種。オスの第1背ビレは非常に大きく、基部に大きい眼状斑を有するのが特徴。オス、メス共に目の上に小さな皮弁を持ち、全身に細かいブルースポットがちりばめられている。このタイプのネズッポとしては最も大きくなり、最大で10㎝に迫る。体色は赤の鮮やかなものから、褐色の多いものまで様々。主に岩礁域の砂底に棲むが、海藻の生えた岩礁上にいると非常に見つけづらい。ゴカイや小型甲殻類などの底性小動物を食べる。

近海で採集されたものがたまに出回る程度で、入手できることは稀。磯採集で採れることもある。餌付きはミヤケテグリやコウワンテグリに比べると、あまりよくない。分布からも分かる通り、温帯に適応した種なので、高めの水温だと短命に終わってしまう。低めの18~23℃ほどが適温である。水槽飼育では、やや扱いにくい種といえる。

種小名は人物名。英名は分布域から。和名は野鳥のヤマドリを連想させるところから付けられたと思われる。

コウワンテグリ

2010年08月31日 03:08

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(photo/J.E.Randall)
オス個体。

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(photo/J.E.Randall)
メス個体。

学名:Neosynchiropus(Synchiropus) ocellatus (Pallas, 1770)
和名:コウワンテグリ
英名:オセレイテッド・ドラゴネット Ocellated dragonet
全長:8cm
西部、中部太平洋に分布

ミヤケテグリやセソコテグリに似ているが、体色が赤くなく褐色である点や、体にほぼ5本の不規則なバンド模様があるといった点で見分けられる。またオスのエラブタには黒褐色帯があり、第1背ビレには4個の眼状斑を持つ。砂底よりも礫底や岩上を好む。底性小動物を食べる。日本では伊豆あたりでも見られるが、和歌山県以南で多く見られる。夜間は砂に潜って眠ることが多い。また、驚いた際にも砂に潜ることがある。

ネズッポ類では最も入荷量の多い種。入荷するのは主に小型個体だが、成熟したオス個体の入荷もある。飼育は割り合い容易な方だが、大きい個体は餌付きが悪いことが多く、小型個体の方が飼育に適している。他、基本的な飼育に関してはミヤケテグリの記事を参照。

種小名は『小さな眼を持つ』という意味。おそらくオスの第1背ビレにある眼状斑を指しているものと思われる。英名も同様。和名は日本初採集の個体が、沖縄県浦添市小湾で採集されたことにちなむ。

セソコテグリ

2010年08月29日 20:54

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(photo/J.E.Randall)
オス個体。第1背ビレの模様に注意。

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(photo/J.E.Randall)
メス個体。

学名:Neosynchiropus(Synchiropus) morrisoni Schultz, 1960
和名:セソコテグリ
英名:モーリソンズ・ドラゴネット Morrison's dragonet
全長:7cm
西部太平洋に分布

ミヤケテグリに似ているが、オス、メス共に第1背ビレの模様を見れば判別できる。ミヤケテグリのオスは第1背ビレに横ラインが入るのに対し、本種の第1背ビレには縦ラインが入る。この特徴はメスも同様である。第1背ビレの形状も、ミヤケテグリとは異なっている。個体が小さいとヒレの模様ははっきりしていないことがあるが、そういった場合は背ビレの形状で判断する。なお、本種とミヤケテグリの中間のような未記載種と思われるものもおり、慣れないと、それぞれの種を判別する際に混乱するかもしれない。生息場所はミヤケテグリとは少々異なり、砂底よりは、どちらかというと海藻の生えた岩上を好む。

観賞魚として入荷するが、ミヤケテグリに比べると入荷量は少なく、あまり見かけない。見かけたときに入手しないと、しばらく来ないということもある。飼育についてはミヤケテグリの記事を参照。

種小名は人物名から。英名も同様。和名は生息地のひとつである、沖縄県瀬底島にちなむ。

ミヤケテグリ

2010年08月27日 16:44

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(photo/J.E.Randall)
オス。分かりづらいが、第1背ビレに黒色眼状斑が見える。
背ビレの模様で他種と区別することができる。

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(photo/J.E.Randall)
背ビレをたたんだオス。

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(photo/J.E.Randall)
メスの第1背ビレは暗色。

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(photo/J.E.Randall)
小型個体。

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(photo/J.E.Randall)
カラーバリエーション。
よく見れば、第1背ビレが暗色なのが分かる。

学名:Neosynchiropus(Synchiropus) stellatus Smith, 1963
和名:ミヤケテグリ
英名:スターリー・ドラゴネット Starry dragonet
全長:7.5cm
インド洋~西部太平洋に分布

赤い体色が美しい小型のネズッポ。この仲間にちょっと詳しい人なら、ここまでで『おやっ?』と思ったことだろう。和名であるミヤケテグリの学名は、Neosynchiropus(Synchiropus) moyeriだからだ。しかし三宅島産魚類の研究で著名な故ジャックTモイヤー博士は、Neosynchiropus(Synchiropus) stellatusNeosynchiropus(Synchiropus) moyeriは同種であると見ていたそうである。個人的にも両種のどこが異なるのかが全く分からないため、ここでは故モイヤー博士の考えに従ってみることとする。さてこの仲間は、どの種もオスの背ビレがかなり大きくなるのが特徴。オスの第1背ビレには、2~3個の黒色眼状斑がある。対してメスの第1背ビレは小さく、全体に暗色で周りは白く縁取られる。体色には変異があり、紅色の鮮やかなものから、褐色のものまで様々。しかし大理石模様をしているという点は変わらない。なお、1センチ程度の幼魚の場合は、ほとんど全身が白い。浅海の礫底や砂底に生息し、底性小動物を食べる。

観賞魚としては、主にレッドスクーターの通称で入荷する。コウワンテグリと並び、最もポピュラーなネズッポといえる。飼育面では導入初期の餌付けが肝心。大型のサンゴ水槽であれば、無給餌飼育も可能だが、多くの場合、しっかりと餌付けた方が長期飼育できる。最初は細かい冷凍餌を底に静かに撒いておくと食べてくれることが多い。冷凍餌に馴れたら、人工餌を混ぜていく。最初から顆粒餌を食べるものもいるが、そういった個体に当たれば面倒はない。初期の餌付けのみ、他の魚がいないリフジウムで行なうなどすれば、多くの個体は餌付くはずである。いったん餌付いて馴れてしまえば、小型ヤッコなどとの混泳も問題無く行なえる。オス同士は激しく争うので、オスの複数飼育は禁物。メスも場合によっては争い合う。単独、あるいはペアで収容するのが無難。ペアで飼育していれば、産卵行動を観察できるかもしれない。入手時は腹が大きく凹んでいない個体を選ぶこと。入荷して間もない個体がよい。長期在庫個体の場合は、餌付いている個体かどうかを確認した方がよい。小型の割に長生きで、5年以上生きることもある。

種小名は『星を散らした』という意味。体側の模様に由来している。英名も同様。和名は生息地のひとつである三宅島にちなむ。