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チョウチョウウオ

2013年08月30日 17:03

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(photo/J.E.Randall)

学名:Chaetodon auripes Jordan & Snyder, 1901
和名:チョウチョウウオ
英名:オリエンタル・バタフライフィッシュ Oriental butterflyfish
全長:20cm
南日本〜台湾に分布

いわゆる『チョウチョウウオ』である。南日本沿岸のサンゴ礁や岩礁域では、どこでも見られるといっていいほどポピュラーな魚である。特に温帯域に多く、沖縄あたりではそれほど数は多くない。単独〜数匹で行動することが多いが、ときに大きな群れをつくることもある。体側に入る金色のラインが特徴だが、幼魚ではこのラインはあまり目立たず、チョウチョウウオ類としては地味な感じだ。幼魚は背ビレ後方に、金色に縁取られた眼状斑をもつが、これは成長と共に消失する。初夏から秋にかけて、タイドプールなどで幼魚がみられる。付着生物や底性小動物などを食べる雑食性。ちなみに昔はコラリス(Chaetodon collare)と混同されており、同種と思われていた時期もある。比べてみれば違いは一目瞭然なのだが。

日本のアクアリスト、とりわけ磯採集をする人にとっては馴染み深いチョウチョウウオ。採集したことのある人も多いのではないだろうか。『ナミチョウ』の通称で親しまれている。観賞魚としてショップに出回ることはほとんどないため、入手はもっぱら自家採集となる。雑食性だが、個体によって餌付け難易度に差が有り、すぐに人工餌を食べだすものもいれば、なかなか人工餌を口にしないものもいる。どちらかというと、すぐには餌付かない個体の方が多いだろう。人工餌を食べない場合は、殻付きアサリから餌付けを始める。最初の餌付けにてこずることはあるものの、いったん餌付いてしまえば、かなり丈夫で飼育し易い。

初期の餌付けを除けば飼育しやすいのだが、体型の維持という点では、いささか難しい面がある。というのも幼魚から育てると、体高がでなかったり、体に対して目が大きいアンバランスな体型になったりと、本来の体型を維持できないことがよくある。原因としては、水槽サイズが小さい、成長期に効率的に餌が食べられなかった、餌の栄養バランスが悪い、水質の慢性的な低下、といった点が考えられる。原因はどれかひとつではなく、おそらく複合的なものだろうと思われる。ナミチョウは飼育自体は特に難しいものではないが、本来の体型、色彩で飼育するのが難しいチョウチョウウオといえる。なお体型の問題は、同系のチョウチョウウオである、ツキチョウやチョウハンにもみられる。

本種は南日本に最も多く、手軽に採集して飼育できるのは日本のアクアリストの特権ともいえるものである。ポピュラー故に軽んじて見られている部分があると思うので、もっと見直されてもよい種ではないかと思う。

種小名は『金色の』というような意味。体側の黄金色のラインに由来。英名は東洋に生息するところから。和名は日本で最も多い基本種ということで、単なる『チョウチョウウオ』になったのではと思われる。
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ソマリ・バタフライフィッシュ

2013年01月13日 16:44

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(photo/J.E.Randall)

学名:Chaetodon melapterus Guichenot, 1863
和名:なし
英名:ソマリ・バタフライフィッシュ Somali butterflyfish
全長:18cm
西部インド洋に分布

テングチョウ、ガーディナーズと共にテング系3種を形成する。色模様はちょっと変わっていて、黒い部分が多いが、黒いところにも銀光沢があり、不思議な色合いを見せる種だ。生息水深はやや深く、20メートル付近から80メートルの深さにまで生息する。単独、またはペアで行動する。雑食性。

あまり輸入されない種だが、以前に比べると入荷量は増えている。テング系3種の中では、最も人工餌に餌付きやすい種。性格もそう臆病ではなく、気もそこそこ強く、扱いやすいと思えるが、本種は水質の悪化にやや敏感な面がある。肌が弱く、環境が悪いとすぐに充血を起こしたりする。また小競り合いが頻発するような状況では、ウロコがはがれて感染症を引き起こすので気を付けたい。ろ過がしっかりしていない水槽や、過密気味の水槽では、本種を飼育するのはリスクが高いと言えるだろう。テング系3種は、どれもひとクセあり、ちょっと手の掛かるチョウチョウウオだ。

種小名は『白い側面』という意味で、本種の特徴をとらえている。英名は生息域のひとつであるソマリアから。

ガーディナーズ・バタフライフィッシュ

2013年01月12日 16:25

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(photo/J.E.Randall)

学名:Chaetodon gardineri Norman, 1939
和名:なし
英名:ガーディナーズ・バタフライフィッシュ Gardiner's butterflyfish
全長:17cm
スリランカ〜アラビア半島に分布

黒い部分の多いテングチョウチョウウオといった感じで、黒い部分以外は非常によく似ている。インド洋版テングチョウチョウウオといった種である。生息域ではわりと普通にみられる種だ。雑食性。

以前はほとんど入荷しない種だったが、近年いきなり入荷が増えて、比較的見かける種となった。テングチョウに比べると、それほど臆病でもなく、餌付きもわりと良い(人工餌に餌付かない場合は、やはりアサリが有効)。それなりに飼育しやすい種といえるが、ひとつだけ注意しなければならない点がある。それは混泳においてで、本種を一番にするような組み合わせでないと長生きしない。とにかく打たれ弱いので、そこは十分に気を付けなくてはならない。いったん劣勢になると、とたんに餌を食べなくなり、そのまま死んでしまうことがほとんど。餌付いて調子の良かった個体を、本水槽に導入して死なせるのは、ほとんどが組み合わせのまずさによるものである。その点さえ注意すれば、飼育しやすく良い魚だ。

種小名は人物名。英名も同様。

テングチョウチョウウオ

2013年01月11日 16:24

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(photo/J.E.Randall)

学名:Chaetodon selene Bleeker, 1853
和名:テングチョウチョウウオ
英名:イエロードッティド・バタフライフィッシュ Yellow-dotted butterflyfish
全長:16cm
西部太平洋に分布

日本では稀種とされるが、フィリピンやインドネシアでは、わりと見かける種である。浅場から50メートルほどの水深までに生息。単独、またはペアで行動する。雑食性。

観賞魚としては入荷が少なく、たまに見られる程度。3センチほどの幼魚が入荷することが多いが、ストック時の餌抜きで痩せていることがほとんど。幼魚は入荷後即購入し、即日アサリによる餌付けを行なうのが鉄則。本種は雑食性ではあるが、人工餌への餌付きがよくない。そのため、人工餌に餌付けようとして、無駄に時間を掛けるのは致命的なのだ。同様の理由で、入荷後3日経った幼魚は購入の価値は無い(5センチ以上の個体は除く)。理由は、多くのショップでアサリを与えることはしないからである。適切なケアを受けなかったテングチョウの幼魚は、ただ餓死を待つ存在でしかない。いったん餌付いて、しっかりと太ってしまえば、わりと気も強くて長生きしてくれる。混泳面では、導入当初は非常に臆病な面があるので、威嚇する魚がいない落ち着いた環境で馴れさせること。とにかく最初が肝心なチョウチョウウオだ。

種小名は、ギリシャ神話の月の女神の名。アイバンドと背ビレから尻ビレにかけて入る黒帯に囲まれた部分が、満月を連想させるからだろうか。英名は体側の模様から。和名は吻が長いことに由来。

アラビアン・バタフライフィッシュ

2011年08月04日 15:44

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(photo/J.E.Randall)

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(photo/J.E.Randall)

学名:Chaetodon melapterus Guichenot, 1863
和名:なし
英名:アラビアン・バタフライフィッシュ Arabian butterflyfish
全長:13cm
ペルシャ湾、オマーン、イエメンに分布

ミスジチョウチョウウオ系では最も大胆な模様をした種。黄色みの強い体色、真っ黒な背ビレ、尻ビレ、尾ビレが強烈な印象を与える。紅海とは地理的に近いにもかかわらず、エクスクイジットBとは異なる色模様に発展しているのが興味深い。エクスクイジットBの生息域と接している地域では、両種の交雑個体が観察される。単独、またはペアで行動し、主にサンゴのポリプや共肉を食べる。

観賞魚として知られているが、生息域の関係から、なかなか見かける機会のない種である。小振りの個体であれば、すぐにアサリに餌付く。他、飼育面ではミスジチョウチョウウオと全く変わらないので、そちらの記事を参照していただきたい。

種小名は『黒いヒレ』という意味。本種の色彩的特徴を示している。英名は生息域から。

エクスクイジット・バタフライフィッシュ

2011年07月13日 16:49

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(photo/J.E.Randall)

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(photo/J.E.Randall)

学名:Chaetodon austriacus Rüppell, 1836
和名:なし
英名:エクスクイジット・バタフライフィッシュ Exquisite butterflyfish
全長:13cm
紅海、アデン湾に分布

紅海と、その入り口であるアデン湾にのみ生息するミスジチョウチョウウオの近縁種。生息域では数も多く、普通種である。本種は背ビレ後縁、尾ビレ、尻ビレが黒い点で、ミスジチョウやインドミスジとは容易に区別できる。ちなみに、ごく小さい幼魚では、尾柄部が黒い程度で、背ビレに黒はなく、尻ビレも少し黒みがかっている程度である。アデン湾とアラビア海が接する地域では、本種とアラビアン・バタフライフィッシュとの交雑がみられる。主にハードコーラルのポリプや共肉を食べ、単独あるいはペアで行動する。

以前から知られている種だが、ポリプ食であるためか、他の紅海産の魚に比べると入荷量は非常に少ない。しかしアサリを用いれば餌付けはさほど難しくなく、ポリプ食チョウチョウウオとしては、飼育はどちらかというと容易な部類に入るだろう。もっと入荷量が増えてもよいのではないだろうか。その他飼育に関してはミスジチョウの記事を参照。

種小名は、「南方の地」という意味である。ヨーロッパからみて南に位置する紅海から由来したものだろう。英名のエクスクイジットは、優美な、あるいは素晴らしく美しい、といった意味で、本種の綺麗な体色から付けられている。

インディアンピンストライプド・バタフライフィッシュ(インドミスジ)

2011年04月08日 16:19

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(photo/J.E.Randall)

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学名:Chaetodon trifasciatus Park, 1797
和名:なし
英名:インディアンピンストライプド・バタフライフィッシュ Indian Pinstriped butterflyfish
全長:15cm
インド洋に分布

以前はミスジチョウチョウウオのインド洋型色彩変異という扱いだったが、近年になって別種扱いとなった。ミスジチョウチョウウオに比べ、尻ビレが鮮やかなオレンジ色をしていること、尾柄部がオレンジ色であること、体側の細い黒斑が目立つこと、背部、体側後方の色彩がパステルブルーであるなどの違いがある。性質などはミスジチョウチョウウオと変わらない。なおインド洋と西部太平洋の境界(インドネシア)では、本種とミスジチョウチョウウオの異種間ペアがみられ、両者の交雑と思われる個体も観察されている。ミスジチョウチョウウオ同様、ミドリイシ類が発達したサンゴ礁域を好み、大抵の場合ペアで行動する。

非常に多色な色彩をした種で、ミスジ系の中では最もカラフルで美しい種といえる。成魚のカラフルさは、他の追随を許さないほどだ。入荷量はさほど多くなく、たまに見られる程度。ミスジチョウチョウウオよりも餌付きが良く、やや大きめの個体でもアサリに餌付けられる場合が多い(入荷状態の関係ではないかと思われる)。そういった点では飼育しやすいと言えるだろう。その他、飼育に関してはミスジチョウチョウウオと何ら変わらないので、そちらを参照のこと。飼育していると体色は若干薄れてしまうが、それでもミスジチョウとははっきりと区別できる。両者を一緒に飼育してみると、その違いがよく分かる。

種小名は『3つのスジ』という意味。もともとはこちらの学名が、いわゆるミスジチョウチョウウオに当てられていた。英名は生息地と体側の模様から。他に、メロン バタフライフィッシュという名でも呼ばれる。また日本のアクアリストには、インドミスジの名で呼ばれている。