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オーネイト・エンゼル

2007年11月03日 00:27

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タヒチ産オス個体(photo/J.E.Randall)

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タヒチ産メス個体(photo/J.E.Randall)

学名:Genicanthus bellus Randall, 1975
和名:なし
英名:オーネイト・エンゼルフィッシュ Ornate angelfish
全長18cm
インド洋ココスキーリング、西部太平洋、南部太平洋に分布

メスは他のゲニカントゥス属のメスに比べて、かなりスタイリッシュで特徴的な模様を持つ。本属中では最も小型の種で、オスでも最大で18cm、メスでは13cm前後である。生息水深は深く、浅くても25m、深くは100m以上の水深でみられる。プランクトン食であるが、同属他種に比べると、付着生物を食べる割合が多い。近年、沖縄でも発見されている。画像は南太平洋のタヒチ産のものを示したが、フィリピン産のものとは模様が若干異なっている。

ゲニカントゥス属は、人気の高いヤッコの中ではあまり注目されないグループである。その中にあって、本種はその模様の美しさ(メスの)で、比較的人気が高い。深場から採集される割には状態がマシなことが多く、アクアリストにとってはありがたい。オス個体でも餌付く確立が高く、水槽内で容易にハーレムを構成することができる。が、水槽内だとメスの順位を巡って争いが起きることがあり、ハーレム飼育は一筋縄ではいかない。水温は23℃ほどと低めが理想。ゲニカントゥスは、ときたま水面に浮いた餌を食べようとして、空気を飲み込んでしまうことがある。そうすると減圧症のような泳ぎをするが、食べた空気はそのうち排泄されるので、そうすればまた元に戻るので心配いらない。3種類ほどで同様の行動を確認しているが、どうして空気を食べてしまうのかはよくわからない。

種小名は「綺麗な、上品な」という意味。メスの色彩に由来しているものと思われる。英名は「華麗な」という意味で、やはりメスの色彩に由来。和名は付けられていないが、沖縄で発見されているところから、近い将来命名されることを期待したい。

トサヤッコ

2007年11月01日 23:49

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オス個体(photo/J.E.Randall)

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メス個体(photo/J.E.Randall)

学名:Genicanthus semifasciatus (Kamohara, 1934)
和名:トサヤッコ
英名:ジャパニーズ・スワロゥ Japanese swallow
全長21cm
南日本から台湾、フィリピンに分布

オスは頭部を中心に鮮やかな黄色に染まり、体の上半分に細かな縞模様が入る。メスは体色が全く異なり、頭部と尾部に黒い模様が入り、背中は黄褐色。幼魚はメスとよく似ているが、背中の黄色みが強い。ちなみに、以前はメスは別種として記載され、クマドリヤッコなる和名が与えられていた。分布は南日本や台湾が中心で、フィリピンではそれほど数がみられない。以前より知られるヤッコだが、その分布域は意外なほど狭いといえる。生息水深は幅広く、浅いところで15mほど。一番深くて100mという記録がある。

観賞魚としてフィリピンから輸入されるが、あまり数が採れないため、入荷はあまりコンスタントとはいえない。また、状態に難のある場合が多く、特に大きなオス個体は状態が悪い。入手時には、十分に状態を見極めてからにしたい。幼魚個体は比較的マシな状態であることが多く、飼育するなら幼魚がおすすめ。他のゲニカントゥス同様、水質の悪化と高水温には弱いので注意。本種(特にオス個体)を状態良く長期飼育するのは、結構難しい。上級者向きのゲニカントゥスといえるだろう。

種小名は、semi(半分の)fasciatus(縞模様)で、オスの模様に由来している。英名は生息の中心が日本のため。和名は、記載に用いられた最初の個体が、高知県(土佐)で得られたことにちなむ。

ヒレナガヤッコ

2007年10月30日 22:54

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オス個体(photo/J.E.Randall)

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メス個体(photo/J.E.Randall)

学名:Genicanthus watanabei (Yasuda & Tominaga, 1970)
和名:ヒレナガヤッコ
英名:ブラックエッジド・エンゼルフィッシュ Blackedged angelfish
全長18cm
西部太平洋に分布

オス、メス共に美しい青白い地肌が特徴。標本写真では色褪せてしまっているが、生時は青白く輝いて美しい。メスにはこれといった模様が入らないが、オスは体側に白と黒のストライプ模様が入る。この属のヤッコとしては比較的小型で、大型のオス個体であっても20cmを超えることはまずない。水深20mより深い場所でみられ、80mの深さでも確認されている。動物プランクトンなどの他、クラゲなども捕食する。

観賞魚として比較的よく入荷する。あまり大型の個体はみられず、幼魚やメス個体の入荷が多い。深場で採集されるため、ショップで減圧症が出ている個体もよくみられる。入手の際は十分に気をつけたい。小さめでまともな個体なら、特に何の苦労もなく人工餌に餌付くことが多いが、大きめの個体はダメージを受けていることが多く、きちんと餌付くまでに立て直すのが難しい。深場に棲む種なので、水温は23℃ほどが理想。高くても26℃を超えないようにしたい。27℃以上は危険水温だ。本種は性格的に多少弱い面があり、混泳相手は慎重に選びたい。自分より強い魚がいると、オスがメス化してしまいやすい。タテジマヤッコの項でも述べたが、なるべく本種をメインにしてやりたいところである。

種小名は人物名。英名は、背ビレと尻ビレが黒く縁取られるところから。和名は、オスの長く伸びる尾ビレに由来している。

タテジマヤッコ

2007年10月27日 03:30

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オス個体(photo/J.E.Randall)
尾ビレの上下は黒くない。腹ビレは黒い。

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メス個体(photo/J.E.Randall)
尾ビレの上下が黒い。腹ビレは白。体側のラインが少々異なる。

学名:Genicanthus lamarck (Lacepède, 1802)
和名:タテジマヤッコ
英名:ラマルクズ・エンゼルフィッシュ lamarck's angelfish
全長25cm
西部太平洋に分布(インドネシアのインド洋側でもみられる)

遊泳性のヤッコであるゲニカントゥス属の中でも、最初に記載された種である。本属のヤッコは、ヤッコ類の中では珍しく、雌雄で明確に体色が異なるのが特徴。その中にあって本種は、他のゲニカントゥスに比べると、雌雄差はさほど劇的なものではない。ヤッコの常として、小さいうちは全てメスで、群れの中で強く大きい個体がオスへと性転換する。一夫多妻型のハーレムで生活し、海中を泳ぎつつ、主に動物プランクトンなどを摂取。また、他属のヤッコのように、付着生物なども食べたりする。水深10~35mの範囲で、最もよくみられる。

観賞魚として古くから知られる種。遊泳性であるために、小型の水槽では飼育できない。最低でも90cm水槽から。大きめな個体であれば、120cm以上の水槽が必要となる。ケニカントゥス属のヤッコは、大きな個体だと餌付けに難儀するため、なるべく小さめのサイズの個体を選んで飼育するのがよい。また、やや深場から採集されるため、入手の際は減圧症に注意する。飼育上の注意点は、水質の悪化に弱く、高水温にも耐性が低いため、その点に十分気をつけること。餌はフレークや顆粒状の人工餌が適している。人工餌を食べない場合は、匂いの強いクリルやアマエビのミンチ、最終手段として生きたイサザアミを与えてみる。小型の個体であれば、さほど苦労せず人工餌に餌付くはずである。広めの水槽で状態良く飼育すれば、オスは尾ビレのフィラメントが長く伸び、優美な姿を楽しめる。あまり大型ヤッコなどとの混泳には向いておらず、なるべくゲニカントゥスを主役にした混泳を組み立てるべきだ。

種小名は人物名。英名も同様。和名はその特徴的な体側の模様から。

オハグロヤッコ

2007年09月26日 00:08

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(photo/J.E.Randall)

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(photo/J.E.Randall)

学名:Centropyge nox (Bleeker, 1853)
和名:オハグロヤッコ
英名:ミッドナイト・エンゼルフィッシュ Midnight angelfish
全長10cm
西部太平洋に分布

模様は何もなく、真っ黒な体色が特徴の小型ヤッコ。胸ビレまでが黒く、ここまで黒い海水魚も珍しい。よく見ると、胸ビレの根本にわずかに黄色っぽい部分がある。色みといえば、そのぐらいしかない。この黒い体色は保護色となっており、岩陰に入ってしまうと影と区別がつかなくなる。生息深度は非常に幅広く、数mの浅場から、70mもの深さまで確認されている。付着生物を主に食べ、サンゴのポリプなども食べる。ちなみに、オハグロヤッコに擬態するニセスズメ、ミッドナイト・ドティーバック Manonichthys(Pseudochromis) paranox (Lubbock&Goldman,1976)が知られており、こちらも胸ビレの先まで真っ黒で、見事なまでの擬態となっている。ヤッコに擬態するニセスズメは、いまのところこの種のみのようだ。

フィリピンなどから輸入されるが、状態がすぐれない個体が多く、なかなか長期飼育に至らない。餌付いても数ヶ月程度で拒食になったりする場合があり、難しい。小さめの良い個体が入手できれば、餌付けも比較的しやすくて、長期飼育も望める。その色彩から、黒いバックスクリーンを使うと、観察しづらくなってしまうので注意したい。これは暗色系の小型ヤッコであるイエローフィン・エンゼルや、アブラヤッコなどにもいえる。

種小名は「夜、暗闇」という意味で、本種の体色に由来。英名、和名も体色から。標準和名ではないが、スミゾメヤッコと呼ばれることもある。

メニイスパインド・エンゼルフィッシュ

2007年09月24日 16:45

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(photo/J.E.Randall)

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(photo/J.E.Randall)

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(photo/J.E.Randall)

学名:Centropyge multispinis (Playfair, 1867)
和名:なし
英名:メニイスパインド・エンゼルフィッシュ Manyspined angelfish
全長14cm
インド洋に分布

黒褐色~茶褐色の体色に、多数の細いバンドが入る。エラブタ後方に、よく目立つ暗色斑がある。また、腹ビレと尻ビレのエッジは鮮やかなブルーに縁取られる。本種には稀に黄化個体(Xanthic Form)が出現する。黄化の程度は個体により様々で、ほとんど黄色いものから、褐色の部分が多いものまでみられる。なぜ黄化個体が出現するのかは、よくわかっていない。ちなみに黄化個体を水槽飼育すると、大抵は数日から数週間で元の体色に戻ってしまう。生息水深帯は幅広く、背の立つような浅瀬から、30mの深さにまでみられる。カイメンなどの付着生物や藻類、サンゴのポリプを食べる。全長は最大で14cmと、小型ヤッコの中では比較的大きくなる種。真ん中の画像は幼魚、下の画像は大きい成魚で、おそらくはオスと思われる。大きくなると、体色が明るくなる個体が多い。

飼育はイエローフィン・エンゼル同様、良い個体さえ入手できれば、さほど飼育の難しいヤッコではない。6cm前後の個体ならば人工餌にも慣れやすくて良い。便によってはハダムシが寄生していることがあるので、念のために導入前に淡水浴をしておいた方が無難。あるいは収容先の水槽に、スカンクシュリンプ(小型の方がよい)を3匹程度入れておいてもよい。

種小名は「多数のトゲ」の意。英名も同様。エラブタの細かいトゲに由来しているものと思われる。英名では他に、腹ビレと尻ビレのブルーが目立つところから、ブルーフィン・エンゼルと呼ばれることもある。

イエローフィン・エンゼルフィッシュ

2007年09月21日 22:44

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(photo/J.E.Randall)

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(photo/J.E.Randall)

学名:Centropyge flavipectoralis Randall & Klausewitz, 1977
和名:なし
英名:イエローフィン・エンゼルフィッシュ Yellowfin angelfish
全長10cm
モルジブ、スリランカ周辺に分布

黒褐色の体色に、胸ビレだけが鮮やかな黄色に彩られる小型ヤッコ。体色をよく見てみると、体側にはいくつかのバンド模様があることがわかる。成熟したオスは、体が深みのあるメタリックブルーの輝きに覆われる。水深3~20mの範囲でよくみられ、あまり深い場所にはいない。分布域は狭いが、分布域内では生息数が多く、普通種である。付着生物や藻類、サンゴのポリプなどを食べる。

モルジブ便で入荷する小型ヤッコ。地味めの体色からか、他の小型ヤッコに比べるとあまり人気のある魚ではない。しかし、成熟したオス個体は意外なほどの美しさをみせてくれる。飼育はやや難しく、餌付けに少々手こずることもある。特に大きな個体になるほど、餌付きにくい。良い個体を得るのも少し難しい。どちらかというと、玄人(苦労人とも言う)が好むヤッコと言えるかもしれない。ハードコーラルのポリプや共肉を食べるため、それらのサンゴが収容された水槽には向かない。ソフトコーラル中心のリーフタンク向きだ。

種小名は「黄色い胸ビレ」の意。英名も同様。どちらも本種の特徴を表している。